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■精神科訪問看護にかかわる皆様へ


これからの日精看は、病院と地域をつなぐ「看・看連携」にも力を入れていきます。
また、精神科訪問看護に関するプラットホームの役割(精神科訪問看護をよりよく動かすための土台のような役割)も担いたいと思っています。
この特設ページや「日精看 精神科訪問看護LINE」などで、さまざまな情報を発信するとともに、皆様の声をお聞きしながら、精神科訪問看護に関する政策提言をより積極的に行っていきます。


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    ■精神科訪問看護ニュース


    精神科訪問看護に関する大切な情報をお届けするニュースです(随時更新)


    Vol.08 (2022/1/11)
    「WRAPと訪問看護」

     WRAP(Wellness Recovery Action Plan)とは、日本語では元気回復行動プランと訳され、アメリカの精神障害をもつ人たちによって作られたリカバリーに役立つツールです。

     精神科訪問看護をする中で、調子を崩すきっかけや、体が出してくれているサインに気付いていない方が多いとか、適切な気分転換活動ができていない方が多い等と気付いたら、このツールを使ってみるのもひとつの工夫かと思います。

     WRAPでは、調子を崩すきっかけになることを「引き金」、体が出してくれているサインのことを「注意サイン」と呼びます。この「引き金」や「注意サイン」に本人が気づき対応することで、精神的に安定した生活を送ることができると考えます。WRAPは「自分で作る自分の取り扱い説明書」であり、本人に合ったプランを本人が作ることが重要で、看護師は利用者の気持ちに寄り添いながら、見守り支援していくことが大切になります。

     まず、「元気に役立つ道具箱」と呼ばれる、自分の元気に役立つものに意識を向けてもらい、その中から「毎日すること」と「時々すること」に分ける「日常生活管理プラン」を作成し、元気の維持や回復に役立ててもらいます。そして、「引き金」や「注意サイン」に気付いてもらい、その時に対応するプランを立て実践してもらいます。同じように、調子が悪くなってきている時のサインや、危機的な状況になっている時のサイン、危機的な状況を脱した時のサインに気付いてもらい、サインが出た時の対応策を一緒に考えていきます。

     WRAPには「希望」、「責任」、「学ぶこと」、「権利擁護」、「サポート」という、リカバリーに大切な5つのキーコンセプトがあります。「希望」とは、夢や目標といった目指すものではなく、希望を感じること、希望の感覚です。例えば虹を見た時に「わぁ。きれい」と思う感情、このようなものが希望の感覚です。東北大震災の後、ある人が「雲ひとつない青空を見た時、希望を感じました」と言いました。これがWRAPでいう「希望」です。「責任」とは、自分が主体になることです。自分自身の元気と生き方に責任を持つことは、失ってしまった主導権を取り戻すことを意味しています。「学ぶこと」とは、適切な意思決定のために必要です。治療についてや暮らし方、人間関係や余暇活動等、自分に関して学ぶことが大切です。「権利擁護」とは、自分を信じ大切にすることです。自分の思いを自分の言葉で相手に伝えることは、自分を大切にするために重要です。嫌なことを「嫌」、したいことを「したい」と言えることが、自分を大切にすることにつながります。最後に「サポート」ですが、人はひとりでは生きていけません。相互作用の中で生きています。家族や友人、サービス提供者から効果的なサポートを受けていると、気分を改善する助けになります。そして最も価値のあるサポートとは、「聴くこと」と言われています。看護師は利用者の思いを、丁寧にじっくり聴くことが大切だと思います。

     訪問看護を始めたばかりの方から、「何を話していいのかわからない」という言葉をよく耳にしますが、<どんなことに希望を感じるのだろうか>、<主体的に生活できているだろうか>、<治療に参加できているだろうか>、<自分を大切にできているだろうか>、<サポーターは誰なのか>等、5つのキーコンセプトを意識しながら会話をすると良いと思います。そして<何が元気に役立っているのか>、<調子を崩す引き金は何なのか>、<体が教えてくれているサインは何なのか>等を問い掛けることで、利用者自身の気付きにつながり、本人主体の訪問看護になると考えます。

     WRAPについて興味を持ち、もっと詳しく知りたいと思われる方は、書籍がありますので参考にして頂けたらと思います。

    河合正樹
    訪問看護ステーション支援太



    Vol.07 (2021/11/27)
    「ケースミーティングのすすめ」

     みなさんの訪問看護ステーションや訪問看護部門ではミーティング、事例検討など、ケースに関する話し合いの時間をどれぐらい持っていますか?

     訪問件数が多くなかなか時間がつくれない、スタッフの時間調整が難しいなどの時間確保の課題によって、話し合う時間をつくれていないという実情がありますか?または、受け持ちの利用者さんのことを担当外のスタッフと共有するという意識がない、職場内で相談できる人や機会・場がないなどの課題がありませんか。

     ご本人の生活の場に出向いて看護を展開する訪問看護では、個別性や密室性も高く、その人が生きてきた歴史や家族の文化などがうごめく空間でのやりとりになります。その方が生活してきた歴史のなかで、今、利用者さんに何が起こっているか、目の前の事象をどう捉えたらいいかということは、ひとりの支援者だけで考えてもなかなか理解することができにくいのではないでしょうか。当事者理解のためには、客観的な視点や多方向からの視点が必要です。

     スタッフ間でのケースミーティングや事例検討は、利用者の気持ちに寄り添いながら希望に沿った看護が展開できているのか、担当スタッフは利用者をどのようにアセスメントして看護実践をしているのか等を担当スタッフの主観的視点と他のスタッフの客観的視点をすり合わせ、アセスメントを深めていくために必要です。また、利用者との関係性を深めることや、目標に沿った看護展開をするのが難しいと感じている場合等には、その理由について患者―看護師関係から紐解くためにも必要になります。

     そこで今回は、定期的にケースミーティングを行なうための時間の確保や、職場文化の構築、ケースミーティングを行なう利点など当事業所での工夫をお伝えしたいと思います。

     当事業所は、精神科診療所からの多職種支援を強みにしています。多職種支援をしている特性から、個別支援チームや事業所内、または関係機関と合同でなど、いろいろなパターンでケース共有をすることを大切にしています。そのなかで、利用者主体のかかわりを展開するために、本人の希望、客観的な情報の擦り合わせ、病状や生活のアセスメント、いま優先するべきことの確認などを欠かさないように意識しています。

     まずは時間の確保、場づくりの工夫ですが、この曜日のこの時間をケースミーティングの時間枠と予定に組み込み、意図的に設定するようにしています。あらかじめ誰がどのケースを提供するかも決めますが、緊急性によって検討するケースを直前に変更することもあります。訪問に影響が出ないようにケースミーティングの時間を決めて見通しを立て、議題を焦点化して話し合うようにします。また、それぞれの意見が出しやすい雰囲気づくりも大切にしています。なぜなら、話し合いの場が、責められる、怒られるというような心理的に負担な状況になってしまっては本末転倒になってしまうからです。

     ケースミーティングを重ねることの利点として考えられることは、
     ①時間を止めて話し合うことで、ケース理解が深まり、整理が出来、かかわりのアイデアが出し合えることで、本人に必要なケアが展開できる
     ②かかわっていないケースのことを話し合うことで、かかわっていない事例についても考えることができ、アセスメント力がつく
     ③かかわっていないケースのこともわかっていると、緊急対応時に活かせる
     ④スタッフの疲弊や抱え込み、孤立を防げる
     ⑤スタッフ間の関係性の構築につながる(スタッフのストレングスをお互いに理解できる、得手不得手を理解しあい、よいチーム支援につなげることができる)
    この土台がしっかりできると、本人参加型のカンファレンスも積極的に行えるようになっていくと思います。

     コロナ禍では、なかなか対面で集まること、話し合うこと自体が難しいかもしれません。組織の規定もあると思いますが、何に気をつければ、感染リスクを回避できるかがわかってきた現在、工夫しだいで取り組める方法があると思います。日常の雑談のなかで、意識せずともやりとりできていたことがコロナ禍において難しくなったとき、当事業所ではコロナ禍だからこそ話し合う時間をつくろうと業務の組み直しをしました。人との距離をとることが当たり前の世の中になってしまいましたが、私たちの仕事で大事にするべきことを、今いちど考えながら、本人主体の支援が都度見直せるようにみなさんの現場でもケースミーティングの場を持つことを工夫してみてください。

    加藤由香
    医療法人小憩会 ACT-ひふみ



    Vol.06 (2021/10/30)
    「服薬を通した関係づくり」

     生活の場での服薬管理は、市販の薬カレンダーを利用したり、手作りの薬箱を使って管理したり、いろいろと利用者の方に合わせて工夫して行っておられると思います。
     では、看護師は、服薬管理をするときに、どのようなことを一番大切に考えているでしょうか?「利用者の方が飲みやすいように考えて取り組んでいます」「処方された薬は回復には必要なことだから、きちんと服用するのが当たり前という気持ちです」といった言葉も聞こえてきそうです。このように“服薬することが当たり前”を前提として支援していることが多いかもしれません。服薬管理ということを意識して考える前に、利用者の方の疾患や服薬に対しての思いや考えをしっかりと訊いていますか。訪問看護師は、利用者の方が薬に対してどのように思っているか?飲み心地をどのように感じているか?自分の疾患についての理解はどのくらいか?ということについてまずはしっかり話を聴くことが大切です。
     服薬に関して、しっかりと話を聴くことが利用者とのかかわりにどう影響してくるのか、ということについて少しお伝えしたいと思います。
     薬を飲む、飲まない、どちらを取っても治療のうえではすごく重要となってきます。そしてこのことに関しても自己決定してもらうことが大切です。しかし、疾患や薬のこととなると医師や看護師の意見が優先して、一方的なものになっているのではないでしょうか。先ほども述べましたが、利用者の方の疾患や服薬についての思いや考えをきちんと訊いたうえで支援することが大切です。なぜなら、このことは、その後の服薬行動に大きな影響を持つことになるからです。
     では、どのようにして服薬を通して利用者とのかかわりを深めていくのかということについて考えます。
     「服薬するのが当たり前」とした姿勢でかかわるのは絶対にダメです。利用者の方の思いや考えが、どのようなものであってもまずは絶対に否定せずに訊くことです。そして、その思いをしっかりと汲み取ることが大切です。
     このような姿勢でかかわることで利用者の方は、看護師に対して、薬の管理をするために来る人、病状を観察して主治医に報告する人というように管理する人というイメージではなく、寄り添ってくれる人、相談に乗ってくれる人とポジティブなイメージを持たれると思います。そして、その後のかかわりのなかで「今の薬は、飲みたくないです」「実は、今薬飲んでないんです」などといった本当のことを話してくれるようになります。このような情報は治療や看護をしていくうえでは、とても重要となります。つまり、利用者の想いや考え否定せず尊重したかかわりをすることで、信頼関係の構築につながり、本音を話してもらえる関係性が構築できるのです。逆に、利用者の方の課題ばかりに目を向けるかかわりをしていると、利用者の方は、心を閉ざされ看護師の望む返事をするという状況が起こるかもしれません。そうなると本音での対話ができなくなります。
     訪問看護は、利用者の方の生活の場で看護をさせていただいているという意識で、利用者の方の話に耳を傾け、利用者の必要とされる看護の展開が望まれます。服薬も利用者の方が、「自分の治療のために自分が決めて服薬する」という意識になるようにかかわっていくべきだと思います。精神疾患の方にとって、薬を飲み続けることを自己決定でき、継続できるように私たちはかかわりたいものです。
     利用者の思いをどれだけ汲み取り、寄り添うかが大きなポイントだと思っています。

    村尾眞治
    訪問看護ステーションReaf



    Vol.05 (2021/9/30)
    「GAFの基礎知識と訪問看護における運用」

     2020年度の診療報酬改定において、精神科訪問看護基本療養費を算定する場合には、訪問看護記録書、訪問看護報告書及び訪問看護療養費明細書に、月の初回の訪問看護時におけるGAF尺度により判定した値を記載することが要件化されました(精神科訪問看護・指導料においても記録を要件化)。このことで、訪問看護に携わる看護師の皆さんはGAF尺度について学んだり、判定について悩んだりされているということを耳にします。そこで今回は、GAF尺度の基礎知識と訪問看護における運用についてお伝えしたいと思います。

     GAF尺度(機能の全体的評価尺度)とは、成人の社会的・職業的・心理的機能を評価するのに用いられている1~100のスケールです。数値が大きいほど健康であるといわれています。その仕組みは、1~100のスケールが10点刻みになっており、数の少ない1~10から段階的にみていきます。各段階とも、症状の重度に関する部分と社会機能に関する部分で構成されていますので、まずは症状の重度に関する部分について評価し、10点刻みの枠のどの枠に入るかをみます。次に社会機能に関する部分が、10点刻みのどの枠に入るかをみます。そして、症状の重度に関する部分と社会機能に関する部分のどちらか悪い方に最も適合する範囲を選択します。選択した10点ごとの範囲の中で1つのGAF得点を決めるためには、被評価者の機能がその10点の範囲で1の位がどの値に該当するかを評価します。(たとえば、症状の重度に関する部分が41~50、社会機能に関する部分が51~60の範囲だとすると、悪い方に合わせるので、41~50になります。その中で症状の重度が41~50の何点になるかを考えます。症状の重度は中間より悪いかどうかで41~45なのか46~50なのかをまずみます。そして46~50の中で何点かを評価していきます)

     訪問看護におけるGAR尺度の運用については、毎月、月初めの訪問時につけること、評価の頻度と期間(たとえば月初めの訪問日の前1週間の状態で評価するとか、前月1か月の様子で評価する等)を利用者ごとに決めておくこと、事業所内で検討する時間を設けながら看護師がGAF尺度に慣れていくことが重要になります。一人の被評価者に複数の看護師がかかわっていて、二人の評価が違う場合には、お互いの意見を伝えあい、話し合って納得のいく評価をするとよいでしょう。とはいえ、評価に自信がないという方もおられるかもしれません。このような場合は、事業所のスタッフで一緒に検討する場を設けるとよいと思います。定期的に月に1~2事例を全員で評価する時間を設けて、GAFスコアになれていくことも必要ではないでしょうか。

     看護師として本音を言えば、利用者の方を数値で評価することへの戸惑いもあるかもしれません。そのようなときには、客観的評価のひとつとしてとらえ、誰かと比較するのではなく、利用者ひとりひとりの変化を客観的に評価したり、訪問看護を振り返るきっかけと考えてGAFを使ってみると考えてもよいのではないでしょうか。訪問看護師のかかわりによって、また利用者と看護師の関係性によって症状が安定することや社会機能が向上することもあると思います。その変化の指標としてとらえることも重要かと思います。

    東 美奈子
    訪問看護 花の森



    Vol.04 (2021/8/29)
    「訪問看護の現場で、倫理的感受性を高めるために」

     「精神科看護職の倫理綱領」が改正され、訪問看護の現場で、私たちが行動するための指針を再確認する機会となりました。個人の尊厳と権利擁護を基本理念とし、アドボケイトの役割を担うということが明文化され、精神科訪問看護のあり方も問われてくると考えられます。

     訪問看護はその人の生活の場での看護展開ですので、主体は利用者自身であり、自律性の回復を目指します。つまり、利用者自らが考え、選択し、行動するプロセスに寄り添い、社会のなかで生きていくことを目標とします。ですから、看護職は、「その人の意思を尊重し、その自由と権利を最大限に保証すること」を前提とすべきです。

     訪問看護の現場では、この当たり前のことを守ることが難しいという状況があります。たとえば、精神症状が悪化し、医療を拒否している本人の主体性をどこまで尊重すればいいのかと、戸惑った経験はみなさんにもあるのではないでしょうか。「精神科看護職の倫理綱領/倫理指針2:善行」では「精神科看護職は、対象となる人々の自己決定を尊重しつつ、最善の利益にもとづいて共に考え、最善と思われる看護を提供する」とあります。「最善」は、利用者によって異なります。あらかじめ、本人の意向を確認し、そのときに備える準備をしておくこと、本人と支援チームの合意のもとでどのようにサポートしていくことが望ましいのか、日々、倫理的な視点で率直な話し合いができるとよいのではないでしょうか。その時々の「最善」を利用者中心にチームとしてどのように考えていくか、というところに私たちの「倫理観」が問われているのだと感じます。

     このように倫理的感受性は、看護師としての経験や、置かれている立場、人生の経験によってもさまざまであると考えられます。中井久夫先生の「患者のおかれている状況に、もし、自分がおかれたら、こう感じるかもしれない」という理解の仕方、「状況的エンパシー」は、その人の立場で、物事をみたり、感じたりすることを忘れることのないようにと、私の「倫理観」を支えています。倫理観は個々に違っていて当たり前です。現場でキャッチした「気がかり」をそのままにしないで、一人で抱え込まず、チームで話し合い、学びの機会としていきましょう。そのプロセスが一人一人の倫理的感受性を高めていくことにつながっていくと思います。そのためには、普段からささいなことでも遠慮なく相談できるような、安心、安全なチームづくり、風通しのよい職場文化をつくることが重要です。

     私たちの職場では、7月に「職員の倫理的感受性を高め、行動する力を育成する」という目的で、倫理に関する研修を実施しました。①倫理的課題は誰にとっても身近なこと、自分ごととして考える。②「精神科看護職の倫理綱領」を行動指針とする。③倫理的に気がかりだと感じた出来事や場面を検討し、改善につなげる。この3点を行動目標として、まずは倫理的な課題をテーマとしたミーティングを行うことから、取り組んでいます。今後、それぞれの現場での取り組みを検証し、倫理的感受性を高めるための工夫をみなさんと一緒に検討していくことができるとよいと考えています。

    松井洋子
    訪問看護ステーションみのり横浜 所長
    精神科認定看護師



    Vol.03 (2021/7/30)
    「災害対策を日頃から当事者と一緒に考えるひと工夫」

     ここ数年、全国各地で自然災害が発生し、障がい者の安全確保や避難方法等の課題が協議されるようになりました。精神障害をお持ちの方は、イメージして先を予測することが難しい方や、ニュース等の映像を見て不安になりすぎてしまう方が多いといえます。だからこそ、いつ起こるかも分からない、どんな被害が起こるかの予測もできない自然災害に対して、事前準備をしっかりしておくことが必要と考えます。つまり、日頃の訪問看護時に、災害に備えて準備しておくことを一緒に考えて、実際に準備しておくことが大切です。また、あらかじめ避難場所、避難経路の確認や支援者への連絡方法等を確認しておくことが重要になります。

     そこで当ステーションでも、一昨年の西日本豪雨災害の経験を活かし、利用者と対策を考え、一緒に準備しておくようになりました。具体的な対策は以下の通りです。

     【1】 内服薬の備蓄
     病院が市外の方や、一日でも飲めないことで命に関わるお薬を服用中の方は、主治医と話し合い、最低でも1週間程度予備として処方してもらい利用者に管理してもらう。

     【2】 常に天気予報等で、災害が起こる可能性を把握する方法を共に考える。訪問看護時にニュース等の内容を利用者と共有する。雨や台風の予報時は、連絡手段や避難についてのシミュレーションを行う。

     【3】 災害発生時は担当看護師が利用者や家族に電話で状況を確認する。その後状況を管理者へ報告し、支援が必要な場合は、関係各所と相談し誰が何を支援するか決定する。

     【4】 市の方針として、障がい者はレベル3で避難するよう呼び掛けているので、利用者には早めの避難を呼びかける。関係事業所が連携し避難方法や場所の協議を行う。

     【5】 あらかじめ利用者と水や食べ物の備蓄を確認しておく。ステーションでも備蓄を行う。水のタンク等も準備しておく。(断水の際かなりの頻度で使用した経験あり)

     【6】 市の担当者と避難所についての情報を共有し、他者と同じ空間で過ごすことが困難な方の避難について、相談できる体制を整備する。早めに避難所へ行く連絡をし、避難所へも環境の調整をお願いする。

     当ステーションでは以上のような内容で準備していますが、最も重要なことは利用者の居住地域の災害時対応がどのようになっているのか、行政の担当者はだれなのかを知り、顔の見える関係をつくっておくことだと思います。瞬時に情報を共有できることが重要になります。利用者ごとに気にかけてほしい内容は違うため、それを避難所等の担当者へ伝えることができると利用者も安心して避難しできると考えます。

     災害が起こっても安心して避難できる環境の調整や、家に残っておられたとしても、誰かに相談できる体制をつくっておくことで、利用者の安心の提供を行っていきたいと思います。

    藤森祥子
    医療法人社団恵宣会 竹原病院
    訪問看護ステーション よつば
    精神科認定看護師



    Vol.02 (2021/7/3)
    「地域の感染状況に応じた感染対策」

     国内で初の新型コロナウイルス感染症の患者が出た際や豪華客船で感染者が相次いでいる報道を見聞きした際に、訪問時に利用者さんとテレビを見ながら「怖いね。大変だよね」と対岸の火事のように話していたことが、今では全国的に感染が蔓延し、人々の生命を脅かす国難となっています。毎日、テレビやインターネット、新聞などで感染者数や死者数、医療機関の切迫した様子が報道され、ただ事ではない状況を目の当たりにし、危機感を覚えることとなりました。当ステーションのスタッフや利用者に感染者がでた場合、どうなるのかと高まる不安のなか、コロナ禍における事業継続のために当ステーションが取り組んでいる対策についてお伝えします。

     いろいろな情報が飛び交うなか、スタッフの不安や恐怖感、緊張感は高く、訪問看護を実施する精神的負担はいまもなお続いています。得体のしれない新型コロナウイルスに対する不安感や恐怖感を全体で共有するために、毎朝ミーティングで地域の感染状況の確認やスタッフ個々の思いを話してもらっています。また、個別面談を行うなど情報の統一化やスタッフのメンタルヘルスへの配慮も行っています。

     ステーションの感染対策として、混乱を招くことがないように、客観的指標およびガイドラインが必要と考え、「新型コロナウイルス対策マニュアル」と「地域の感染率に応じた感染対策表(以下、「フェーズ別対応表」と記す)」を作成し、スタッフ全体で確認しあい、適宜、状況に応じて修正しながら訪問看護を実施しています。

     感染対策マニュアルの内容については、他のステーションと多少の相違があったとしても、スタッフおよび利用者の感染防止と、コロナ禍でも事業を運営していく方策を示していると思われるため、割愛させていただきます。

     今回、ご紹介するのは、「フェーズ別対応表」のことです。訪問看護ステーションは、活動エリアが定められており、所在地のある市町だけではなく、隣接する市町も活動エリアとしている事業所が多いと思います。当ステーションの活動エリアである市町は複数個所に渡っているため、市町の感染率を毎日算出し、独自の基準値と照合することで、フェーズ1~5(1.散発期、2.拡大期、3.危機期、4.爆発準備期、5.蔓延期)までの対応を設定しています。たとえば、フェーズ1の感染防具として、サージカルマスク、手洗い、手指消毒、備品消毒としていますが、フェーズ4・5では、フェイスシールド、ガウン、グローブを追加しています。また利用者やご家族に協力をいただきながら、フェーズ1~5まで訪問直後の検温、状態確認、ディスタンス、室内換気を行いつつ、訪問時に発熱や倦怠感などの感冒症状を認める利用者へは、理解を促し、かかりつけ医または受診相談センター(保健福祉事務所)へ連絡し、指示を確認することを行っています。

     このフェーズ別対応表の利点としては、地域の感染状況に応じた感染防具や対応方法にすることで、利用者の不安を煽らないことやスタッフの労力への考慮、感染防具の節約につながります。あくまでも当ステーションが試行錯誤のなか取り組んでいる対策方法ですので、皆さんの参考になるかはわかりませんが、利用者とスタッフを守り、事業を継続させていくひとつの方法と受け取っていただければ幸いです。

     最後に、私たち訪問看護師の活動の場は、利用者のご自宅であり、利用者やご家族に感染させてしまうのではないか、または、自身が感染するのではないかという恐怖感をつねに感じながら訪問看護に従事しなければなりません。使命感と高い倫理観に支えられているとはいえ、頑張ってくれているスタッフがいるからこそ、今もなお訪問看護サービスを継続できています。スタッフに感謝しつつ、今後もスタッフ全体で困難に立ち向かいながら、この局面を乗り越えていきたいと思います。

    松本和彦
    株式会社ハートケア鳥栖 代表取締役/統括所長
    精神科認定看護師



    Vol.01 (2021/5/31)
    「地域包括ケアについて」

     地域包括ケアシステムという概念は、1980年代に、当時の御調町(現広島県尾道市)で医療と福祉行政が連携して「高齢者の寝たきりゼロ」を目指すという取り組みで実施されたものです。その後、2014年には、「医療介護総合確保推進法」が施行され、地域包括ケアシステムの構築が全国的に進められるようになりました。

     では、我が国の地域精神保健医療福祉についてはどうでしょうか。2004年9月に策定した「精神保健医療福祉の改革ビジョン」において「入院医療から地域生活中心へ」という理念が明確になり、施策が行われました。こうした中で、2017年2月には、「これからの精神保健医療福祉の在り方に関する検討会」報告書において、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが地域の一員として、安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を目指すことが新たな理念となりました。しかし、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムって精神科訪問看護師が何をすべきかが、はっきりしないと感じておられる方は大勢おられるのではないでしょうか?

     精神科訪問看護師は、在宅でケアを展開しています。まずは、利用者さん自身が自分の健康は自分で守る行動ができるように働きかけることが大切です。つまり自助の部分を支援するのです。そこには疾病教育や服薬指導はもちろんのこと、心身両面の健康を守るためにどうするべきかをともに考え実践することが役割です。そして、家族調整も含めて、環境を整えることも必要となります。あとは互助です。地域にどのような資源があったらよいかと地域課題をして捉え、発信し、作り出す工夫が必要です。地域にあるものや地域住民を資源と捉えて働きかけることです。そのためには、精神科訪問看護師が地域ケア会議を開催してもよいと思います。また、包括支援センター等が主催している地域ケア会議に参加することもよいでしょう。このような取り組みをぜひ、一人の利用者さんを中心に実践してみてください。地域包括ケアの入り口がきっと見えると思います。





    ■精神科訪問看護Q&A


    精神科訪問看護における疑問や困りごとに、日精看の精神科認定看護師がお答えします(随時更新)


    Q.01
    「利用者に不用意な発言をすることで精神状態に悪影響を及ぼすのではと思い、緊張してしまいます。コミュニケーションの難しさを感じています」

    ▶A.01

    たとえば、うつ状態がつよい利用者は、思考の整理がうまくできなかったり、自責的になっていることもありますので、「頑張りましょう」という励ましの言葉は、逆に混乱を招くこともあります。「今まで頑張ってきたのに、まだ頑張らないといけないのか、頑張りが足りていない自分はダメだ」と受け止める利用者もいます。利用者の病気の特徴や性格、自己肯定感の低さなどから、言葉の受け止め方が、看護師の意図しない伝わり方をしてしまうこともあります。傾聴と共感を行い利用者のつらさを理解しようとする姿勢と健康回復に向けた協力者であるということを一貫して丁寧に説明し、態度で示すことが必要です。あまり堅苦しく考えず、人と人としての会話を楽しむことから始めましょう。


    Q.02
    「ベテラン看護師しか精神科訪問看護はできないのでしょうか?」

    ▶A.02

    多岐にわたる病態やさまざまな背景や社会的役割をもつ利用者への訪問看護は、ベテラン看護師でなければできないということはないと思います。確かに経験よって訪問看護師としての能力に違いはあると思いますが、大切なことは利用者の立場になって考えることができるか、利用者の価値観を尊重できるかということです。また、利用者のニーズをくみ取り、丁寧な看護援助に努めていくことで、必要な訪問看護を提供していくことができるでしょう。

    Q.03
    「介護保険では訪問看護ステーションにおけるBCP作成を求められていますが、独自で作成するのはとても困難を感じています。サンプル的なものを示してもらえませんか?」

    ▶A.03

    BCPの作成に当たってのガイドラインとひな形は、自然災害発生時・新型コロナウイルス感染症発生時のものが、厚生労働省のホームページに公開してあります。それを参考に事業所や地域の状況を反映させたものを作成されるとよいと思います。
    たとえば新型コロナウイルス感染症では、ガイドラインの中に掲載されているフローチャートに沿って、事業所では誰がそれを担当するのか等を明記します。介護保険では感染対策委員を選出するようにも勧められていると思います。その人を中心に統括すると共に、感染者が出た場合の想定をし、市町村の担当者へどのような動きになっているのかをあらかじめ問い合わせて聴取しておくことが大切です。
    自治体によって初動の時点で連絡する機関が違う場合があるので、必ず確認し計画に反映させておくとよいと思います。
    あとは厚生労働省のホームページに様式ツール集もありますので、利用されるとよいと思います。

    介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修動画|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

    Q.04
    「訪問時にご自宅のお部屋まであげてもらうことができません。どのようにしたらよいでしょうか?」

    ▶A.04

    部屋が整理されていない、見られたくないものがある、潔癖で人を入れたくないなどいろいろな理由があると思います。しかし、玄関で応対してもらえるということは、訪問看護を迎え入れたくないということではなく、利用者の警戒心や慎重さが故の状況だと思います。焦る気持ちを抑えて、利用者のペースに合わせ、傾聴や共感的姿勢により、安心感や信頼性を高めることが大切です。安心感や信頼性が高まると、本音を話されたり、部屋に招き入れられることになると思います。


    Q.05
    「『具合が悪いのでキャンセルします』と連絡がありました。具合が悪いなら訪問したほうがよいと思いますが、どうしたらよいでしょうか?」

    ▶A.05

    利用者は、話をすることや話を聞くことへの力が低下している状況かもしれません。このような状況では、自分のペースで過ごすことに努めるなど、利用者なりに体調を整えようとしているのかもしれませんね。精神科訪問看護では、対話を通じて看護を提供することが多いため、無理強いはせず、次回の訪問日程を確認する程度でよいでしょう。また、訪問時に「具合が悪いときに訪問看護が重なった場合どうしたいか?」ということを確認してもよいのではないでしょうか。柔軟に対応してくれる訪問看護ステーションへの信頼が高まることもあります。ただ、身体的な疾患や緊急対応が必要なケースもあり得ますので、利用者の状態を十分理解しておく必要があります。


    Q.06
    「訪問しお話を伺うと、妄想や幻聴と思われる話ばかりされ、このまま聞き続けていいのか、どうすればいいのか悩みます。また妄想や幻聴がひどくなれば入院が必要なのでしょうか?」

    ▶A.06

    精神科訪問看護では、まず利用者さんの話したい話を聞くことが大切な援助になります。一見妄想や幻聴と思われる話の中にも、利用者さんが今どんな状況にあるのかのヒントが隠れています。いつもの話との違いや、不安や恐怖を抱いているのか、自分にとって必要な内容なのか、利用者がその妄想や幻聴に行動が左右されているか、その行動は問題となるものなのかなどの視点で話を聞いていくと、必要な支援に気づくことができると思います。
    妄想・幻聴がある=入院が必要ではありません。そういった症状の現れ方が利用者にとって悪い内容に変化している時は、何か背景に不安なこと等があるサインだと考えてください。(例えば金銭的な不安がある・薬が何らかの理由で飲まめなくなった・近隣トラブル等)裏に隠れている問題を丁寧に探し、解決への支援をおこなうことで、入院治療を行わなくても、病状が安定される方もおられます。そのためには、幻聴や妄想などについてもしっかり傾聴し、その背景を理解していくことが大切だと思います。


    Q.07
    「利用者さんと対話を行うことが多く、こういう訪問の内容で良いのか悩んでしまいます。このまま対話中心に進めていってもよいのでしょうか?」

    ▶A.07

    「利用者が訪問看護に何を求めているか」をまず話し合うことが大切です。利用者は、孤独感とか、病気や将来への不安を感じていることも多く、訪問看護師に話を聴いてもらいたいと思っているのではないでしょうか。「訪問看護師と話せる、訪問看護師に相談できる」ということは、利用者からすると楽しみな時間となっていると思います。対話を通して、何に悩んでいるのかを探り、解決のために一緒に考えていける看護師は、利用者にとって貴重な存在です。訪問看護で看護師は利用者に対して「話を聞かせてもらってありがとう」という気持ちになれるとよいと思います。


    Q.08
    「不安になったり、さみしくなったり、確認したかったり、緊急ではないような電話対応が多くて困っています」

    ▶A.08

    「電話をかけていい場所がある」ことで安心している利用者は多いと思います。困ったときに相談できる役割を担い、安心を与えられることは訪問看護師としては大事なことです。しかし電話の回数が多く、緊急性が低いように看護師が感じる場合が続くと電話を受けるほうは疲弊してしまいがちなのも事実です。しかし、利用者中心に考えると、緊急性の捉え方には個人差があります。また、精神障害のある人は、アクシデントに対処する力が弱く、混乱をきたし、適切に優先順位をつけて考えることが苦手という特性があります。
    利用者からの緊急電話は、緊急事態というよりも「ご本人にとっての一大事」と捉えて、まずは混乱を整理できるようにこちらがゆとりを持って話を聴きましょう。早めに切り上げようとすると、満足感に至らず、かえって時間がかかるというように逆効果になることもあります。利用者の話を傾聴しながら時に要点まとめをし、利用者が納得して電話が切れるように工夫することが大切です。また、電話の頻度が多い人に対しては、緊急電話の使い方について一緒に考える時間を持つことも必要です。


    Q.09
    「精神科訪問看護のゴールってあるのでしょうか?」

    ▶A.09

    精神科訪問看護は、利用者の病状に応じて健康状態の悪化防止や、回復に向けて援助することで、利用者が体調面や生活面などのセルフケア活動を主体的に行えるようになることが目的の一つです。訪問看護側の理想や価値判断が優先されるのではなく、利用者が求める生活が営めるように援助しながら、利用者が訪問看護を必要としない状況に至れば、そこがゴールになると判断できます。訪問看護の終了については利用者や主治医と話し合うことも大切です。その時に「必要になればいつでも再開できる」ことも伝えると利用者の安心感はあるでしょう。


    Q.10
    「本人は自分なりにがんばっているけど、家族の理解が得られず家族関係がギクシャクしている場合、本人・家族との狭間でどう支援すればよいのでしょうか?」

    ▶A.10

    訪問看護を実施していくなかで、悩むことのひとつとして家族支援があります。
    訪問看護師が大切にすることは、本人の思いや考えをしっかり聴くことです。希望を奪わないようにしっかりと本人の思いに寄り添う看護を行いましましょう。同時に家族支援をすることも大切です。家族に本人のこと(病状や生活のしづらさを含む)を理解してもらいながら、ともに支援していく協力者になってもらえるようにかかわりましょう。そのためには、本人・家族の両者と対話を続けることが大切です。対話をし続けることで双方の思いや考えを理解することができるようになり、お互いの思いや考えが少しズレていたことに気づけることもあると思います。
    訪問看護師は、それぞれと対話する時間を大切にするとともに一緒に対話をすることをセッティングするなどの工夫が必要です。私たち看護師が解決しようとするのではなく、一緒に対話をしながら、相互理解を深めることで時間はかかるかもしれませんが、自然と良い方向に向かっていくことになります。


    Q.11
    「訪問看護の利用者で『なんでもしてもらいたい』と多くの要望をされる利用者がいます。このような要求がある人への対応のポイントを教えてください」

    ▶A.11

    まず訪問看護の趣旨をしっかりと説明することだと思います。最初が大切ですので、訪問看護契約締結時に、本人が訪問看護を利用する目的を訊き、一緒に目標を考えましょう。そのうえで、訪問看護の趣旨をお伝えし、できることできないことを確認しておくことが大切です。まずは、訪問看護の契約を締結するときに丁寧な説明を心がけましょう。それでも、時間の経過とともに依存的になってきた場合は、できないとお断りすることも必要だとおもいます。


    Q.12
    「ご本人の夢や希望に沿った支援計画(リカバリープラン)を立ててかかわりたいと思うのですが、利用者の希望がはてしなく遠い未来だと感じた場合、どのようにしたら良いのでしょうか?」

    ▶A.12

    「ご本人の主体性」を大事に捉える過程で、「利用者の希望のままでいいのか」というジレンマが生じることもあるかと思います。「希望のまま」がどういうことかも焦点にはなりますが、「訪問看護をすること」=「看護師がある程度の主導権をもつ」という思考では、ご本人が思い描く生活の実現のためのサポートは難しくなります。
    リカバリーとは「疾患からの回復だけでなく人生の回復」という考え方です。ご本人にとって自分らしい人生を取り戻し、自分らしく生きることを模索することは、時間をかけながら実現していくプロセスです。
    ご本人の希望も夢もご本人のもの。そして語られたことの責任もご本人のものです。たとえ無謀な夢に思えても、「じゃあ、一緒にまず何をするか」と考えると、意外に現実的なスモールステップに辿り着くということもあります。自分自身のことが一番わかっているのは、ご本人かもしれません。そこに看護師が寄り添って、一緒に泣いたり笑ったりしてくれる存在となることも必要ではないでしょうか。リカバリープロセスのなかで、少しずつ理想の自分に近づいたり、自分に自信がもてたりしていきます。その回復過程に寄り添うことこそが「ご本人の主体性を大事にする」ことです。


    Q.13
    「暴力などの激しいエピソードのある方の支援に入る場合、はっきり言って不安です。どうしたら訪問看護師の安全を守れるのでしょうか?」

    ▶A.13

    そのエピソードに過剰に反応することも適切ではありませんが、いったい何が暴力に至る要因だったのかは理解しておく必要があります。「暴力リスクのある人」というレッテルを貼ってしまうことよりも、そこに至るとき、何が起こっていたのかを捉えることのほうが重要です。
    関係性を構築していくなかで、対人関係上でのやりとりに過敏な人も多いですから、訪問看護師の言動が暴力の引き金にならないようにかかわることは大切です。まずは真摯な態度で信用される対象になること。基本的なことながら、こういうことを重んじることが一番大事だったりします。
    またご本人にとっては、暴力や粗暴行為という方法でしか表現できないという病状があったかもしれません。病状のアセスメントについては主治医と連携しながら行い、その危険性を感じたらどう対応するか、事業所内で話し合っておくことも大切です。利用者さんの権利を守りつつ、訪問看護師の安全を守ること。その視点も管理者には求められます。だからこそ現状を正確にアセスメントすることが必要です。暴力エピソードに限らず、生活の場に支援に入るにあたって、協働が必要と感じるケースには行政はじめ、関係機関との連携が必須です。危機的状況のアセスメントが共有できることで広い視野での支援につながります。


    Q.14
    「利用者さんよりもご家族が話をしてしまうとき、どうしたらいいでしょうか?」

    ▶A.14

    看護師がご本人にお話を聞いているにもかかわらず、ご家族が本人の代わりに話をされることもよくある場面かなと思います。それがなぜなのかアセスメントすることも必要です。家族も聞いてもらいたいことがたくさんある場合や訪問看護師へ大きく期待を持たれている場合、利用者さんがうまく話せないと思っておられる場合もあると思います。
    ご家族が話を聞いてもらいたいと思っている、期待や助けを求めている様子なら、精神科訪問看護の目的の中には家族支援も入っていますので、しっかり家族の話を聞くことも重要と考えます。
    利用者さんがうまく話せないと思っている場合には、こちらから利用者さんへの声掛けを行い、気持ちを引き出し、利用者さんの話せている様子をしっかり見ていただくと良いと思います。ご家族の思いと利用者さんの思いを一度に聞くのが難しい場合は、そのことを説明し、順番を決めて話すことがよいでしょう。また、多職種等の協力を依頼し複数で対応したりしましょう。
    訪問看護でご本人の話を聴くことはもちろん大切ですが、同時にご家族の話もしっかり聴いて、話したいことを吐き出していただくことが重要と思います。


    Q.15
    「福祉サービスも利用されている利用者のことで関係機関と会議をしたいと思うけど、コーディネートは誰にお願いすればいいでしょうか?相談支援専門員ですか?」

    ▶A.15

    利用者のことで報告をしたいこと連携をしたいことがあれば、そう感じた人がコーディネートして良いと思います。
    よく相談支援専門員を通してコーディネートを依頼されることをよく耳にしますが、情報はタイムリーに伝えることが大切です。そのためには、必要性を感じた人がコーディネートするのがベストだと考えます。なので、誰がコーディネートするとかは気にせず必要性を感じた人がすぐに発信しましょう。
    もし関係者の全員が集まらない状況になったら、話し合いたい内容によって参加者の優先順位を決めてなるべく早く開催するのが良いと思います。あらかじめ、関係者の集まりやすい時間や曜日とかを共有しておくとよりスムーズです。




    ■日本精神科看護協会の入会方法



    詳細は「入会のご案内」ページでご覧いただけます。